セルモーターが時々回らない(セルカッチン病)
愛知県のT様のポルシェ911Carrera(3.2カレラ)です。今回はトラブルシュートを承りました。
ご来店時に車両を簡単に拝見すると、ブレーキオイル(フルード)が入っていませんでした(漏れてました)。T様はビックリされつつも、DIYの自己流改造は楽しいけれど、リスクと裏腹、と、おっしゃいました。ごもっともです。
車両お預かり後、何回か移動したところで(距離50mぐらいでしょう)、ブレーキペダルがエアを噛んだ感触になり、以後は、サイドブレーキを利用して停車しました。間一髪というかギリギリで当店へたどり着けたのかなと思います。ご無事で何よりでした。
さて、本題のスターターモーターです。
数年前より、時々セル本体がカチンと言うだけでクランキングしない症状が出ており、プルインコイル(ソレノイドスイッチ)とセルモーター本体を交換したものの症状に変化が無く(単純に交換しただけですね)、安心して乗れるようにするために原因を探る事になりました。
今回、一ヶ月ほどお預かりしましたが、症状は一回も出ませんでした。トラブルシュートとしては、難しい部類です。まずは、以前のセルモーターを分解してみました。下記写真です。
写真左:アーマチュアのコンミュテーターは荒れていますが、セルカッチン病の原因では無さそうです。
写真右:ブラシも荒れてますが、セルカッチン病の原因では無さそうです。
接触面の欠落状況から突入電流は多めかもしれません。
セルカッチン病発生中でも、プルインコイルは作動してるように思えます。そうすると、疑うべきは、大電流が流れるメイン回路となります。
決めつけは判断を誤る事に繋がりますが、まずは接触抵抗が増大していると仮定して、それを見つける為に、工夫して色々と測ってみました。検出精度は、0.1ミリオームです。誤差は0.1ミリオーム以下だと思います。電線メーカーの銅線導体抵抗なども参考にします。色々と測りながら精査していきますが、未知の計測ですから分からない事も多く、推測も多くなります。しかし、メイン回路中に存在するはずがない抵抗値27ミリオームの存在を発見しました。
もし電流が400アンペア流れると、400A*27/1000オーム=10.8ボルト電圧降下し、セルは絶対に回らないでしょう。
次に、27ミリΩの所在をピンポイントで突き止めて、揺すったりしました。揺すると0.1ミリΩ~20ミリΩoverまで変化しますので、接触不良に間違い有りません。力を抜くと必ず16m~27mΩで落ち着きます。原因が判明しましたので適切な処置をして修理完了です。
しかし、お預かり期間中は、セルは回ったのです。計算上、回らないはずなのに回ったのです。不思議ですね。
静的な状態で27ミリΩの抵抗があっても、クランキングは出来たのです。
電子が微少空隙を飛び越えたのか、抵抗部分で発熱し溶着したのか、憶測は尽きません。
症状を確認できない状態でのトラブルシュートと修理でしたが、電気的な数値を精査する限り、ココ以外に異変は見つかりませんでした。数十回以上計測し、再現性/確実性を考慮しました。よって完治したと考えますが、一般論としては、似た異変が別の箇所に発生する可能性も考えるべきでしょう。しかし過去の車両履歴を遡って考察した結果、それは「無い」と考えます。T様の911(のみ)に関しての話です。
「無い」という保証は出来ませんが、20年ほどは安心して良いと思います♪
有り難うございましたm(_ _)m
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