愛知県のS様のポルシェ911CUP(964カップカー)です。今回はCUPカーのロムの現車セッティングのご依頼を承りました。有り難うございます。
DMEエンジンコンピューターチューニングとか、ロムチューン、ROMチューニングとか言われています。エンジンを制御する純正コンピューターの中のロム(ROM)を書き換えて、より乗りやすくしたり、よりパワーを出したり、より気持ちよく官能的にしたり、します。ノインマイスターでは、実車による実走行を基本としています。現車合わせとか現車セッティングとも呼ばれています。
ガソリンを濃くしたり薄くしたり、点火時期を進めたり遅らせたり、セッティング内容は色々です。必ずしも濃くすれば良いとか点火を進めれば良いとか言う話ではありません。エキゾーストを変更すれば適切な点火時期は数度ぐらい簡単に変わってしまいます。
上記写真、左から
1 純正のO2センサーを外し、空燃比センサーを取り付けます。装着位置は触媒の前です。取り付けネジ(取り付けボス)が無い場合にはボスを溶接する必要が有ります。
2 運転席シートの後のDEMコンピューターのロムの引き抜き、代わりにROMエミュレーターを差し込みます。
3 セッティング機材です。昔からやっていますので古い物が多いです。
助手席にノートパソコン、空燃比計(AF計)を載せます。助手席の足下にロムライター、各機材のACアダプター、コンセントタップ、DC-ACコンバーターを載せます。AC100ボルト電源用の12ボルトバッテリー(100Ah)を助手席の後に搭載します。全ての配線を接続し、パソコンからデータをエミュレーターに送って、エミュレーターを起動すれば、ROM無しでエンジンを掛ける事が出来ます。
元々チューニングロムらしき物が入っていましたが、気にせずに先入観無しで、まずはアイドリングや空吹かしや発進を繰り返して、アイドル付近から発進加速初期のデータを書き換えます。主に軽負荷領域です。過去にいくつものチューニングロムを見てきましたがこの領域を丁寧に書き替えている物を見た事がありません。あくまでも私見ですが。
冷間始動時の状況を試せるのは、一日に朝晩の2回しか有りませんので、煮詰めるには何日もの日数が必要になる事が多いです。
同時に一般道を走行をしてロム全体的に書き替えていきます。多ければ何十回も書き換えます。色々なアクセルワークや各種走行パターンを試します。パワーも大事ですが、フィーリングやアクセルのツキの良さを重視して書き替えます。
最後に高速セッティングです。パワー重視ですが、少しコダワリがあります。パワーが少し落ちても(推定で数馬力です)気持ちよく官能的な回り方を目指して書き換えます。もし複数のマップパターンで迷ったら、気持ちよく回る方を選びます。
サービスエリア(SA)かパーキングエリア(PA)のたびに停車して、空燃比(AF)などのログデータの確認とロム書き換えを行います。実際にはロムの代わりにエミュレータで動かしていますので、パソコン上のデータを書き換えます。
上記写真左上から右へ向かって、
1-1 ミッドナイトに工場を出発しました。路面はドライでした。
1-2 SA1回目停車とデータ書き換えです。ドライでした。
1-3 SA2回目。ウェットでした。
1-4 SA3回目。ウェット。
2-1 SA4回目。ウェット。濃霧で肌寒かったです。
2-2 SA5回目。ウェット。
2-3 SA6回目。ウェットからドライになりつつあります。
2-4 SA7回目。ほぼドライです。夜が明けつつあります。午前4時過ぎです。
1-1 SA8回目。ドライです。パトカーが来ました。
1-2 SA9回目。
1-3 SA10回目。
1-4 SA11回目。
2-1 SA12回目。
2-2 SA13回目。
2-3 SA14回目は、高速を降りて、一般道です。
2-4 帰ってきたのはお昼前です。出発してから12時間30分後でした。
道中、大型トラックのタイヤつきホイールが1本と、多数のタイヤ破片が落ちていました。安全運転していましたので、1.5車線ほど使ってゆっくりとスラロームしながら避ける事ができました。次のサービスエリアで止まっていると、パトカーが来て、タイヤにぶつかって乗り上げた国産車2台から事情を聞き始めました。1台の同乗者らしき女性に話しかけてみると、「タイヤを新品に交換したばかりで良かったです、もし古いタイヤだったら滑ったり飛ばされたりして壁に当たっていたかも」という内容の事をおっしゃいました。タイヤの認識が素晴らしいと思いました。2台とも前回りの損傷がありましたが、大事故にならなかったのは不幸中の幸いだと思いました。
964CUPの話に戻ります。タイヤはポルシェ認証(認定、指定)のNが付いています。カップの固められた足ゆえに認証Nタイヤでもたわむ気がしましたので、エア圧を高めにして走りました。それでも高速でたわむというかヨレというか剛性の不足を感じてしまいました。
別件でオーナーのS様からのご依頼のハンドル振れも確認し、状況をS様にお伝えしましたが、普通の車でしたら振れを感じないか気にならないレベルだと思います。高度なセッティングでシビア固められた足ゆえの、シビアな問題だと思います。
翌日以降、アイドル/一般道/全開などを再確認/再変更してロムデータを全体的に煮詰めて納得できればようやく生データの完成です。パソコン上の生データをロムライターを使用してROMに書き込んで、ROMをDMEコンピューターに装着すれば、パソコンやセッティング機材を車両から降ろす事が出来ます。
今回のガソリン使用量は95リットル程かと思います。走行距離は約500Kmとなりました(一般道が200Kmほど、高速が300Kmほどです)。アイドリングや空ふかしや発進を繰り返していたのは5時間程かと思います。
今回は、メタルクラッチや軽量フライホイールが入っている事もあり、アイドリングやクラッチミートや一般道低速走行の領域のセッティングに時間を掛けました。その結果、5速2000rpm以下でもトルクもりもりで物凄く走りやすい状態になりましたが、特定の油温の時だけに特定のアクセルワークの発進をすれば特定の回転域で失速する事に気が付きましたので、普通の状態へ戻さざるを得ませんでした。普通の状態とはいえ元々とは比べ物にならないぐらいに遙かに良くなっています。
ダイノパックやシャシダイを使って煮詰めればあと3~5PS程度は上昇すると思います。しかし、あえて、この設定とさせて頂きました。
乗りやすくて気持ちよく官能的な回り方をご堪能ください。
有り難うございましたm(_ _)m
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